読売新聞2015年11月15日付朝刊に掲載された「放送法遵守を求める視聴者の会」の意見広告(撮影/写真部・片山菜緒子)
読売新聞2015年11月15日付朝刊に掲載された「放送法遵守を求める視聴者の会」の意見広告(撮影/写真部・片山菜緒子)

「安倍首相ガンバレ」を叫ぶ子どもたち、教育勅語を朗唱させる幼稚園……。森友学園問題に端を発して「右翼」という人たちが、にわかにクローズアップされている。AERA 2017年5月1-8日号では「右傾化する日本」を大特集。「右翼」って何?「保守」とどう違う? 素朴な疑問に答える。

 メディアの右傾化はどうなのだろうか? 東京MXテレビ問題を始めとした、最近の動きを取材した。

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 3月下旬の日曜日。都内で「東京MXテレビ問題の本質」と銘打つイベントが開かれた。真冬の寒気が押し寄せる中、会場は立ち見を含む参加者で埋まった。

 この日、主催者を代表してあいさつしたのは、保守系ウェブ局「日本文化チャンネル桜」沖縄支局キャスターの我那覇真子氏。沖縄出身・在住で「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会」代表の肩書も持つ我那覇氏は、全国各地の保守系イベントに引っ張りだこだ。

 我那覇氏は屈託のない表情で用意した原稿を読み上げた。

「辛淑玉氏は寝た子を起こしました。われわれにとって大きなチャンスなのです。彼女の日ごろの“反日傲慢”はとんでもない墓穴になりそうです。自ら掘った穴ですから、きっと収まりもよいかもしれません」

 むき出しの憎悪。にもかかわらず、会場にどっと笑いがどよめく。観衆は中高年が多い。

●反対運動を「テロ」

 続いて登壇したのは、「科学者」の武田邦彦氏。「ニュース女子」にコメンテーターとして出演していた武田氏は、番組で取り上げた沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設現場での反対運動についてこう言った。

「やっぱり暴力的ですからね。簡単に言えばテロですよ、あれは」

 会場から「そうだよ」の声が飛ぶ。武田氏は沖縄の独立運動にも言及した。

「いまもし沖縄が独立したらね、あっという間に中国領になりますよ。沖縄の方には申し訳ないんだけれども、20万人は殺されますね。中国の占領政策というのは5%殺しますからね」

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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