「この列車まだ走ってたのか」
「私、これで通学してたわ」
家族と会話を弾ませる姿を鳥塚さんは見てきた。鳥塚さん自身、子どものころに「SLブーム」を体験し、実際にSLで通勤、通学していた祖父母の世代との会話を通じて鉄道ファンの道に引き込まれていった原体験がある。
「鉄道文化を受け継ぐ作業は都心部ではできない。ローカル線だからこそできることだと思っています」
いすみ鉄道は88年、利用客減少で廃止となったJR東日本の木原線を受け継いで誕生した。経営は苦しく存廃の危機にも立たされたが、レトロ列車を走らせることで他では見られない「非日常空間」を提供し、多くの観光客を引きつけた。
「SLのような第1世代の車両は残るけど、そのあとの車両は残りづらい。いすみ鉄道は非電化ですが、もし電車を残せるなら戦後多く造られた72系や101系を保存したいですね」
(編集部・福井洋平)
※AERA 2017年4月10日号