国鉄が解体し、7社のJRが発足して30年。株式上場を機に、脱テツドウにシフトする会社があれば、お先真っ暗な未来にアタマを抱える会社あり。現在のリストラなど働く人たちの労働環境悪化は、国鉄解体に原点があるとの指摘も。「電車の進化」などさまざまな切り口で30年を検証していく。AERA4月10日号では「国鉄とJR」を大特集。
解体から30年を経て、それでもなお根強い人気を誇る「国鉄」、JNR。なぜかくも懐かしく感じてしまうのだろうか。千葉県の「いすみ鉄道」には、オヤジたちが興奮する懐かしの車両があるという。
* * *
“国鉄”を売りにする鉄道がある。千葉県の房総半島を走る第三セクター「いすみ鉄道」。
外房線・大原駅(いすみ市)から内陸部の上総中野駅(大多喜町)まで26.8キロを結ぶ。2010年にJR西日本・大糸線で走っていたディーゼルカーのキハ52を、12年にJR西日本のキハ28をそれぞれ譲り受けた。
ともに国鉄時代から走るベテランの車両だが、いすみ鉄道ではその国鉄時代の色に塗り替えて運用を開始。さらには15年に導入した新車のキハ20系もオレンジとベージュのツートンカラー、いわゆる国鉄色に塗り直してレトロ色を前面に打ち出した。
内装の広告も昭和40年代後半~55年ごろのものを取り入れ、当時の「国鉄路線図」なども車内に掲示。それを目当てにする観光客もじわじわ増え、いすみ鉄道の知名度を上げている。
なぜ、国鉄色なのか。09年に「公募」でいすみ鉄道社長に就任した元航空マンの鳥塚亮さん(56)は言う。
「国鉄カラーの列車はかつて全国を走っており、50歳以上の人たちに懐かしんでもらえる。それをきっかけに彼らの子どもたちの世代との会話が盛り上がり、下の世代に国鉄カラーが刻み込まれ、鉄道文化が下の世代に受け継がれていくのです」
確かに懐かしい国鉄色に、中年世代が目を輝かせる。