アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は江の島ピーエフアイの「ニッポンの課長」を紹介する。
* * *
■江の島ピーエフアイ 施設統括部 ショー制作チーム チームリーダー 板倉知広(43)
「えのすいトリーター」と呼ばれるダイバーが大水槽の中に入ると、1匹の魚が近寄り、そばで泳ぎ始めた。
「あれはタカノハダイのキャンディーです。このトリーターと大の仲良しなんです」
新江ノ島水族館(えのすい)でショーの制作を担当する板倉知広=写真右=が教えてくれた。大水槽で行われるショー「うおゴコロ」でトリーターは、水槽にいる魚たちを次々と紹介していく。
「トリーターたちが普段、動物たちと接している姿を見せるようなショーにしているんです」
えのすいでは、「うおゴコロ」以外にも、クラゲ、イルカ、ペンギンなど、六つのショーを楽しむことができる。板倉はこのすべての制作に携わる。
アルバイトを含め25人のチームを率いて、新しいショーの開発を担当。それだけでなく、ショーのクオリティーを上げるために演出家や舞台監督と話し合ったり、プログラムのメンテナンスの対応をしたりもする。クラゲのショーでは世界で初めて、3Dプロジェクションマッピングを採り入れた。
「魚や動物をもっと好きになってほしいし、つながる命を感じてほしいんです」
1996年、東海大学文学部卒業後に、記念品などを販売する会社へ入社したが、「地球の環境保全に貢献する仕事がしたい」と一念発起。2001年、東海大学海洋学部へ再入学した。
その在学中にえのすいでバイトを始め、水族館に来た人たちが、動物の命に触れることで、地球環境のことまで考えてくれるかもしれないと思うようになった。04年にえのすいの社員になってからずっと、制作を担当する。
「お金をかけた豪華なショーというよりも、心地のいい水族館で、温かい気持ちになれるショーをつくっていきたい」
どのショーにも、板倉のそんな人柄がにじみ出ている。
(文中敬称略)
(編集部・大川恵実)
※AERA 2016年12月19日号