実際、私が夫のことを「主人が」と言うのを聞いて、お、と意外な顔をする人は少なくありませんでした。それを見るたびに得意になっていたのです。
で、ある日ハッとしました。なに気持ちよくなってんだ、私。これ、むしろ夫に対して「私のほうが上だからこそへりくだるのよ」っていうゲスいマウンティングになってないか?と……。夫はまるで気に留めていませんでしたが、彼は私のことを嫁とも家内とも呼んでいませんでした。うん、そっちのほうが健全だよね。
以来、人前でことさらに「主人が……主人は……」と言う女性を見ると、パートナーとの学歴や職歴の差を意識しているのかな? と、かつての自分を思い出してしまいます。彼を肩書抜きで尊敬していれば、わざわざ自分を卑下しなくてもいいはずですから。
割り切ったコスプレのつもりでも、無意識のうちに「男は女よりも格上であるべし」という思い込みに縛られているのかもしれません。
※AERA 2017年3月27日号