文氏は昨年12月、慰安婦問題の日韓合意について「日本の法的責任と謝罪をより明らかにする交渉が必要だ」と述べている。しかし、安倍政権にとってみれば、再交渉に応じる余地はゼロだ。再交渉を求められて応じなかった場合、日韓関係がさらに悪化することは避けられない。その場合はどうするか。文氏はまだ語っていない。
他の候補者も似たり寄ったりで、いずれも慰安婦問題の再交渉を求めている。唯一、日韓合意の履行を訴えていた黄首相だが、3月15日、大統領選への立候補見送りを表明した。
韓国政府高官は言う。
「たとえ文氏が大統領になっても日本との再交渉は不可能。大統領になればわかるはずだ」
もちろん、選挙前の発言を当選後に変えることはあり得るが、そう簡単ではない。できれば、選挙前から発言を軌道修正しておいたほうが軟着陸しやすい。そのためには日本側からのアプローチが欠かせないのだが、駐韓日本大使は釜山の総領事館前に設置された「少女像」の問題で一時帰国したままだ。(朝日新聞ソウル支局・東岡徹)
※AERA 2017年3月27日号