二つ目は、ウケそうなキャラクターを演じるパターン。私立大学文学部の女子学生は、「本当はすごくあがり症でコミュニケーション能力も全然ない」が、全く志望していない会社も含めて面接を受け続け、明るくて話が面白いキャラを作り上げた。
「内定後に面接担当者から、コミュ力を評価したと言われてホッとしましたが、あれ、見抜けてないんだなとも思いました」
前出のIT企業に内定した男子学生に至っては、自主性、リーダーシップ、コミュニケーション能力などを包括できるエピソードを作り上げ、「そういう人間になりきった」という。
三つ目は、他社の選考状況についての嘘。典型的なのは、国立大学理系学部から損害保険会社に入社する男子学生だ。
「ライバル企業で2次、3次まで進んでいると言えばできるやつだと思ってもらえる。受けてもいない会社や落ちた会社も、ゾンビのようによみがえらせた」
●人生かかってますから
後ろめたくないのだろうか。
「会社は社運をかけて採用しているわけじゃないでしょう? こっちは人生かかってますから」
有名私立大学商学部から地方銀行に就職する男子学生が真顔で言えば、他の学生も悪びれる様子はない。
「友人の実績だったとしても、同じ大学に通う自分にだってできないはずはない。ある意味、リアルで根拠がある。スタートラインに立つための嘘ですから後ろめたさは全然ない」(前出・IT企業内定の男子学生)
「必ずバレるから嘘はつかない」というメーカー内定の女子学生も、冷めた目で言う。
「私はいかに嘘をつかずに相手をだませるか、楽しんでました。そもそも企業だって嘘をついている。お互いさまです」
学生たちが口をそろえる「企業の嘘」は、経団連が定める公式スケジュールを無視した水面下の採用活動。インターンは採用と無関係というのも「嘘」だし、企業説明会でやたらグローバルを強調したり、社員として花形の部署の人ばかり出してくるのも「盛り」だ、と映る。