ごみ撤去費の減額算定に当たり、第三者ではなく、国土交通省大阪航空局が実施したのは前例のない措置だった。定期借地から売買に変え、分割払いまで認めた契約も前例はない。今年2月8日時点で過去3年間に公共随意契約で売った36件のうち、売買価格を当初公表しなかったのは、この1件のみだった。
さらに、森友学園が取得する以前の取引にも留意せざるを得ない土地の「履歴」がある。登記上、この土地は12年7月の「現物出資」により、同年10月に国から新関西国際空港株式会社(新関空会社)に所有権移転されている。それが翌13年1月に「錯誤」を原因とし、所有権抹消され、国に戻されているのだ。
豊中市が新関空会社から15年6月に取得した近隣の約7210平方メートルの土地購入価格は約7億7148万円だった。森友学園に対する「特別な便宜」は国有地だったからこそなされたという事実を踏まえれば、所有権が国に戻されたのは決定的に重要だったことになる。
本誌は、「錯誤」の理由や経緯について大阪航空局に問い合わせたが、「担当部署にマスコミの問い合わせが集中しており対応しきれない」とし、期限内の回答を得られなかった。
●口利きはあったのか
気になるのは、所有権が国に戻される過程で、森友学園側と国との交渉は始まっていたのか、という点だ。
この用地をめぐっては、11年7月ごろ、森友学園とは別の学校法人が7億円前後の価格を財務局に提示。価格交渉が折り合わず、この法人は約1年後に取得を断念している。
一方、大阪府教育庁私学課によると、森友学園の籠池泰典理事長から小学校設置認可の規制緩和の要望を受けたのは11年夏だったという。
売買契約に至るまでの間、森友学園と国の間でどのようなやり取りが水面下で交わされていたのかは依然不明だ。しかし、一連の手続きで解せないのは、「普段は前例踏襲に固執する役人が、なぜリスクを負ってまでイレギュラーな契約方法を選択したのか」(木村市議)ということだ。「政治家の口利きなど何らかの“圧力”が働かなければ通常考えにくい」(同)。野党の追及もメディアや国民の関心も、その一点に尽きるのではないか。