浜野製作所のケースのように、産学連携はEV開発の大きな柱となってきた。09年には慶応大学環境情報学部の清水浩教授(当時)らが、企業や自治体と連携してEV開発ベンチャー「シムドライブ」(東京都板橋区)を設立。車輪の中にモーターを内蔵する新方式のEV開発の先駆けとなった。

 10年には京都大学の学内ベンチャー「GLM」(京都市)が伝説のスポーツカー「トミーカイラZZ」をEVで復活させることに成功。高級EVベンチャー企業の地位を確立し、昨秋のパリ・モーターショーで最新試作車「G4」を発表。流線形のデザインが特徴的なスーパーカーで、走行距離は400キロ。19年の市販を見込むという。

 一方、高性能、高価格路線とは真逆のケースもある。群馬大学と県内企業でつくる「次世代EV研究会」が共同開発した低速電動バス「MAYU(まゆ)」は、地域の活性化に一役買っている。約3年前から桐生市内の観光地などを巡る無料循環バスとして活用。定員10人、最高時速は19キロだが、地元の高齢者や子どもにも親しまれている。「次世代EV研究会」の幹事も務める前出の松村さんは言う。

「EVの利点は自然エネルギーだけでも走れることなので、低速車との相性が非常にいい。EVは『ガソリン車の代わり』ではなく、まったく違う乗り物として認識を変えるべきです」

 世界最速のスポーツカーから低速小型車まで。まるでアプリで自分好みにする「スマホ」のように、EVをカスタマイズする未来──。今は、その「革命前夜」なのかもしれない。(編集部・作田裕史)

AERA 2017年3月6日号

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