「後方を絞ったデザインでルーフをつけているので、カメラマンは中腰で立つことになりそう。その分、全長が想像よりも長くなりました」(遠藤さん)

 ここで小さなデザイン修正や素材の検討、費用や納期の最終確認をする。そしていよいよ実物大の原型を作り、型を取り、石膏やFRP(繊維強化プラスチック)を塗り固めながら、ボディーパネルを作っていく。

 今回は締め切りの関係で「模型」までしか実現できなかったが、実際には、ここから3カ月ほどで納車される(単体受注の場合)。ちなみに、AERAのEVを実車化すると、およそ500万円かかるという。ただ、過去にはバイクの部品を再利用して50万円(ベース車代除く)ほどで済んだケースもあり、どこまでこだわるかで費用は大きく変わる。

 今後の小型EVの可能性について、小崎さんはこう語る。

「技術的なことだけでいえば、モーターの制御を変えるなど動力部分をいじることも可能です。EVはオーナーのこだわりを反映しやすい。将来的には、個人が自由にEVをオーダーメイド化する時代が来るはずです」

●いまや電器店でも可能

 EVはガソリン車やハイブリッド車に比べて構造がシンプルで、部品点数も格段に少ない。一般的に、ガソリン車は1台に約3万点の部品が必要だが、EVはその10分の1の3千~4千点。参入障壁も低くなり、2000年以降、大手メーカー以外にもEV開発を手がける企業が増えた。元スバルのエンジニアで、EV開発に詳しい群馬大学の松村修二客員教授が言う。

「小さなEVなら町の電器店でも作れます。最大の課題はバッテリーの性能。まだ改良の余地があり、今の5分の1ほどの値段で、エネルギー密度が高いバッテリーが開発される可能性もある。そうなれば、自動車業界の構図はガラッと変わります」

 実際、技術屋たちが腕を鳴らし始めている。各地で個性派企業が名乗りをあげているのだ。

 異業種から「世界一」を目指すのは、人材派遣会社「アスパーク」(大阪市)。約3年前から世界最高加速のEV「アウル(Owl)」の開発をスタートさせた。同社代表取締役の吉田眞教さん(44)が目指したのは、「世界一速いスポーツカー」だった。

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