「とはいえ、時速400キロを目指したところで、日本では現実的ではない。それで『0-100(ゼロヒャク)』(停止状態から時速100キロまでのタイム)を調べてみると、当時の世界記録は、アリエル・アトムの約2.3秒。じゃあ1.5秒出せばしばらく世界一は安泰だろうと(笑)」(吉田さん)
14年4月、大手自動車メーカーで設計、開発を担当していた島崎正己さん(55)が中途入社したことで、プロジェクトは現実味を帯びていく。改めて現状分析をした結果、1.5秒ではなく2秒なら可能性があること、世界最速EVなら市場はあることはわかった。ただ、
「メンバーは社長と僕の2人だけ。設計図一枚もなかった」
島崎さんは苦笑する。まさに、ゼロからのスタート。協力企業、大学を探して100社以上を当たったが、ほとんどが門前払い。やっと見つけた企業も「やはり手に負えない」とさじを投げた。そんな中、世界的なエンジニア集団「イケヤフォーミュラ」が興味を示し、なんとか開発の道筋がついた。
●2秒で時速100キロ超を
だが問題は山積みだ。モーターは品質面でのリスクを嫌う国内メーカーは売ってくれない。バッテリーからモーターへのエネルギーを制御するコントローラーの配線もすべて手作業だ。2秒で時速100キロにするには、1万分の1秒単位の緻密さが要求され、失敗すればコントローラーが燃えることもある。そうしたら、また作り直しだ。
「前例のないことをやるのだから、全てオリジナルで作らないと絶対に世界一にはなれませんから」(島崎さん)
昨年末からは、ボディーを外した形で走行実験に入った。現時点ではまだ2秒に到達していないが、今年9月までには、完成形で100キロ達成を目指す。吉田さんは自信ありげに言う。
「9月のフランクフルト・モーターショーに出すのが目標です。加速が世界一のEVスポーツカーなら、何億円でも買いたい人は必ずいますよ」
ちなみに予定価格は「4億円を超える見込み」という。