流産は赤ちゃんがお母さんのおなかの外では生きていけない妊娠22週より前に妊娠が終わることをいう。日本産科婦人科学会のホームページによると妊娠の15%前後が流産に至るとの統計もあり、厚生労働科学研究班の調査では、妊娠歴のある35歳から79歳の女性のうち4割近くが流産を経験していた。
都内のテレビ局に勤める女性(35)は、流産をしたときに助産師から「よくあることだから落ち込まないで」という励ましに、かえって傷ついたという。
「こんなに悲しいのに、悲劇のヒロインにもなっちゃダメなのか、と心の行き場がなくなってしまった」
おなかの中に確かに宿っていた命を失う喪失感は計り知れないほど大きい。
誕生しても、生後4週未満に亡くなる「新生児死亡」もある。
赤ちゃん自身が病気を持っている場合も多く、妊娠中にわかれば、中絶するのか産むのか、誕生後も、延命治療をするのか家族でゆっくり時間を過ごすのか、家族は難しい決断に迫られる。
●分娩後休むこともなく 子の生死の決断迫られる
横浜市の女性(36)は5年前、妊娠22週(6カ月)の時に赤ちゃんの心臓に病気が見つかった。難しい手術が何度も必要で、成功しても長く生きられるかはわからないという。中絶可能な21週6日を過ぎていたが、医師は「希望すれば手術します」と言った。違法なことを医師に提案させてしまうほど生きるのが難しい病気なのだと悟った。
わずかな可能性を信じて、妊娠を継続し、予定日5日前に自然分娩で出産。
「やっと会えたね」
10カ月頑張って生まれてきてくれた我が子に会えた喜びもつかの間、分娩で疲れた体を休めることもできないまま、医師の説明を聞き、子の生死を決断しなければならない。
娘の体重は1600グラムあまり。入院先の病院では、過去に同じ病気でこれほど小さい赤ちゃんの手術の実績はないという。夫とも話し、小さな体にメスを入れるのは残酷な気がして、「手術はしません」と医師に伝えた。
治療の代わりに家族の時間を手にした。胸に抱いた娘に搾乳した母乳を飲ませる。2歳だった長女も一緒に宿泊し、家族4人で並んで眠る。ずっと願っていた「普通」の幸せの形だった。