「予習が足りないのでは」と指摘するのは、明治大学の藤田直晴教授(都市地理学)だ。
簡略化された案内図では、ランドマークや交差点など、目的地までの情報の提示が足りないこともあれば、果ては間違っていることもある。
「必要な情報が不足していれば、私でも道に迷います。迷わないためには地図をもとに予習も必要です。どこを基点にどの方向に進むのか、目印は何か。目的地までの周辺情報を、出発前に頭に入れておくことです」
●自分中心の地図の時代
カーナビや地図アプリが誕生して、誰もが自分中心の地図を使えるようになり、迷う機会は減ったはずだ。なのに、GPSがあっても迷う。東京大学空間情報科学研究センターの有川正俊特任教授は、こう言う。
「使い方がわかっていないか、スマホが極端に古い場合がほとんどです」
GPSがきちんと作動するには条件がある。衛星四つの電波が入ること。都市部のビルのはざまでは衛星からの電波が反射したり遮られたりしてしまう。地下空間や室内でも、電波は届かない。
「少しでも空の見える、開けた通りに出て、GPSが現在地を把握するまで10秒程度待ちましょう。一度、高い精度の位置情報を得れば、その後のナビも正確になります」
実は地図側も、わかりやすく進化してきた。02年、昭文社から発売された「Link Link!」は、地図に苦手意識を持つ女性をターゲットにつくられた“女子地図”だ。
「事前調査で最も多かったのが、『自分がどこにいるかわからない』という意見でした」(広報担当・竹内渉さん)