小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。オーストラリア行きを決断した顛末を語った新刊『これからの家族の話をしよう~わたしの場合』(海竜社)が発売中
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小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。オーストラリア行きを決断した顛末を語った新刊『これからの家族の話をしよう~わたしの場合』(海竜社)が発売中
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 公共の場での授乳は「目のやり場に困る」という女性の投書が話題です。私も今から15年くらい前に、出産したばかりの友人が目の前でペロッと服をめくっておっぱいをあげ始めたのを見て驚きました。しかし自分が子どもを産んでみると、彼女の気持ちがよく分かりました。授乳中の乳房は我が子の食料貯蔵庫にしか見えないので、自宅に遊びに来た友達の前で平気で乳首を出したりしてしまうのです。

 今はいい授乳服もできて、外出先でも乳房を全く見せることなく授乳できるようになりました。それでも「目のやり場に困る」と感じる人がいるのは、もしかして「今あの人は乳首を吸われているのだ」と考えてしまうことに不快感を覚えるのかもしれませんね。女性の乳房は性的なものでもあり、乳首を吸う行為はセックスを連想させます。誰かが赤ちゃんに吸わせているのを見ても、なんとなくバツの悪い思いをしてしまうのかもしれません。でも、投書の件のようにファミリーレストランで、授乳服で授乳するのは、マナー違反ではないでしょう。目のやり場は他にもいくらでもありますし。

 日本に限らず公共の場での授乳には賛否があるようですが、自然で美しい姿なのだから全く構わない、と言う人たちもいます。私は授乳自体は構わないけれど、肌の露出を抑えたほうが人を不安にさせないだろうと思っています。

 居心地が悪くなる人や、動物めいた生々しさを感じる人たちに「そう感じるな」と言っても無理ですから、あとはとにかく授乳室を増やすことですね。

 ちなみに、オーストラリアでは昨年から国会の議場での授乳が認められています。男性であれ女性であれ、育児を理由に国会の活動への参加を妨げられてはならないというファミリーフレンドリーな政策によるものなのですが、それというのも議員たちがベビーブームだったからという背景があるようです。

AERA 2017年2月13日号