国会が始まった。安倍晋三首相が1億総活躍のための最大のチャレンジとする働き方改革の議論も進む。一方で、所管する厚労省のブラック公務は置き去りに……。
通常国会が始まる前々日の1月18日、記者は厚生労働省内で取材をしていた。この日は水曜日。超過勤務(以下、残業と表記)縮減の取り組みとして、内閣府は厚労省を含めた全省庁に対し、毎週水曜日は定時退庁するように促している。大臣の答弁準備のための仕事もなく、早く帰りやすい日だったようだ。
20時5分前になると、退庁を促す館内放送が流れた。20時になると一斉に電気が消えたが、間髪を入れず再び電気がついた。その前後、パソコンに向かう職員の視線が動くことはない。いつものことなのだろう。外に出てビルを見上げる。半分くらいは明かりがついていた。
職員のAさん(30代)は、
「定時退庁日はメールでも案内が届きますが、もはや迷惑メール。帰れるなら帰ります」
手元に厚労省のある課の残業記録がある。時期は2016年3月だ。
●2割強は過労死ライン
「局や課、業務の担当により仕事量は大きく異なるが、年度末は予算編成の時期で、年間を通じて最も忙しい時期」(50代の職員Bさん)という。とはいえ、過労死ラインの月80時間を超えて残業している職員が課全体の半数を超え、100時間以上の残業者も1人や2人じゃない。
こんなことがありうるのか。激務の国会業務を担当する職員のCさん(30代)に尋ねると、
「答弁の資料を揃え、朝に大臣へ説明をするまで業務は続く。昨年の臨時国会期間中は退庁が早くて22時。週2、3回は日付をまたぎ、期間中は自宅で夕食を食べたことがない」
そもそも長時間労働の是正は政府の目玉政策「働き方改革」の大きな柱だ。所管の厚労省による大手企業の摘発が続く。昨年の電通に続き、今度は三菱電機とその労務管理担当者が入社1年目の社員に違法な残業をさせたとして労働基準法違反の疑いで書類送検された。塩崎恭久厚労大臣は13日の記者会見で、
「労働時間の管理が不適正な企業はしっかりと監督指導をしていきたい」
と監督省庁として指導を強化する考えを示したが、自分たちの足元はどうなのか。女性職員のDさん(20代)はこう話す。