鳥インフルエンザに感染した鶏が見つかり、殺処分作業が進む養鶏場=2016年12月、宮崎県川南町 (c)朝日新聞社
鳥インフルエンザに感染した鶏が見つかり、殺処分作業が進む養鶏場=2016年12月、宮崎県川南町 (c)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る

 鳥インフルエンザが猛威を振るっている。ヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザ出現の危機が迫る。専門家が懸念する蔓延の元凶は、こんなところにあった。

 1月23日、ジュネーブで開かれた世界保健機関(WHO)の執行理事会で、マーガレット・チャン事務局長は、新型インフルエンザの危機を訴えた。

「世界はパンデミックの兆候を見逃してはならない」

 昨年末から今年にかけて、アジアや欧州など40カ国近い国で鳥インフルエンザウイルスの感染が発生していることを受けての、異例の声明だ。

 鳥インフルエンザの問題は、人類の新型インフルエンザに対する脅威につながることを知っている人は多いだろう。

 本来、鳥から鳥にしか感染しない鳥インフルエンザウイルスは、型の異なるウイルスと交雑するとウイルスの一部が入れ替わる「遺伝子再集合」を起こすことが知られている。ヒトからヒトへ感染する変異を遂げると、新しいウイルスに対する免疫を持っていないヒトは、重症に陥る危険性が高いのだ。

 全世界で死者が2千万人とも4千万人ともいわれる1918年のスペインかぜを始め、57年のアジアかぜも、68年の香港かぜも、そして2009年のH1N1の世界的流行(パンデミック)も、こうして生まれた。

 WHOが危機感を募らせるのは、複数の型の鳥インフルエンザウイルスが、現在世界中に蔓延しているからだ。

 日本のH5N6型ウイルスに加えて、欧州ではH5N8型が流行を拡大させている。中国では、これに加えてH7N9型もはびこっており、この複数のウイルス蔓延が、新たなパンデミックを生む要因になると専門家の間で指摘されている。

●中国で高病原性が蔓延

 確かに今季の流行は、いくつもの点で従来とは異なっている。例えば、発生の時期だ。

 致死率の高い高病原性鳥インフルエンザウイルスに限って言えば、日本で79年ぶりにウイルス感染が見つかったのは、年が明けた04年1月中旬、山口県の養鶏場でだった。06~07年のシーズンも、10~11年も、ほとんどが渡り鳥の飛来からしばらくたった年明けに感染が広がった。

 ところが、今回の鳥インフルエンザの出現は、16年11月下旬から12月にかけて立て続けに七つの養鶏場に及んだ。

 京都産業大学鳥インフルエンザ研究センター長の大槻公一教授は、出現時期の変化をこう読み解く。

「ウイルスが蔓延している中国からシベリアへ帰る渡り鳥によって、高病原性ウイルスがシベリアの営巣地を汚染している可能性が高い。だから翌年、シベリアから日本に渡り鳥が飛来して、すぐに野鳥に感染してウイルスが広がったのではないか」

次のページ