トランプ米大統領が就任した。米国分断の象徴ともいえる新政権は、世界の分断をも引き起こしかねない。唯一の希望は長女と閣僚の常識にかかっている。
「10人に4人にしか好まれていない。1977年以降で最も嫌われた大統領」(米ワシントン・ポスト紙)
「支持40%、不支持52%。歴史的に低い支持率での大統領就任」(米CNN)
就任式直前の1月17日に、二つの米大手メディアが示した世論調査の結果について、トランプ氏は早速かみついた。
「大統領選で偽りの世論調査を流したのと同じ人たちによる支持率調査で、今回も不正操作されている」(ツイッター)
確定総得票率がトランプ氏46.1%、クリントン氏48.2%となって、一般得票数で敗者が勝者を約290万票上回るという皮肉な結果となった米大統領選。昨年11月の選挙時と比べても、今回の世論調査はトランプ不人気が広がったことを示す。米国内の分断がますます深まったことの表れだ。
●批判は暴言、中傷で
ところがトランプ氏が見ている世界は違う。
「違法に投票した数百万人規模の票を取り除けば、私は得票総数でも勝った」(11月28日のツイッター)
根拠を示さず、断定調で論を展開し、あらゆる批判を暴言や中傷、圧力を交えた批判でやり返す。その一方で協力者はべた褒めするのがトランプ流だ。
米国に5兆円規模の投資を実施し、5万人の雇用を創出すると表明したソフトバンクグループの孫正義社長を「マサ」と呼び、「彼にとても感謝している」とカメラに向かって強調したかと思えば、メキシコでの新工場建設計画があるトヨタ自動車をツイッターで名指しし、「ありえない! 米国内に工場を建てるか高い国境税を払うかだ」と脅してみせる。米国に雇用を取り戻すという公約実現へ力ずくで協力させようとする露骨な「企業たたき」が続いている。