別の理由でノープーを断念する人もいる。会社員の女性(46)がノープーにトライしたのは1年前。シャンプーが原因で肌が荒れたり、抜け毛がひどくなったりしたからだ。商品をいろいろと変えてみるも、自分に合ったものは見つからない。そんなときヨガ友にノープーを勧められた。

 湯シャンを始めると肌荒れは解消。しかし髪がベタッとし、頭頂部がぺたんこに。

「どんな服を選んでも髪がブスだとどれを着てもブス。『髪は女の命』って心底思いました」

 髪がサラサラになるという酢リンスを始めたが、直後に親戚の葬儀があり、「その酢のものみたいなにおい、葬式ではやめて」と両親に言われた。1カ月ぶりにシャンプーすると、たちまち幸福感がこみ上げてきた。

「フワーッとボタニカルな香りと泡に包まれて。『ただいま』って思いました」

 だが取材の日、彼女はシャンプー探しの日々に逆戻りしていた。手にはこの半年の間に使った10種類を超える試供品の束。肌荒れが怖くて、シャンプーのボトル買いはできないという。

「ノープーにもシャンプーにも行き場はなくて。疲れてきました……。世の中に自分に合うシャンプーって本当にあるのかなって思ってしまいます」

●個々に適正な量と頻度
 すると、あろうことか、「シャンプーの時代は終わった」「ノーシャンプー革命」などとうたうメーカーが現れた。2016年秋に発売された、ロレアル パリのクレンジングクリーム「エクストラオーディナリー オイル ラ クレム ラヴォン」。従来のシャンプーは泡を立てる際の摩擦が髪にダメージを与えてきたとして、すすいだ髪と頭皮にクリームを塗布して洗い、流すだけ。泡を立てず髪も傷めない。自らを否定するような広告。シャンプーはもう売らないんですか?とメーカーを直撃すると、

「そういう日が来ないとは限りません。この商品の売れ行き次第です」

 という答え。ノープー革命が成就するかどうかは消費者に委ねられたということか。

「メーカーが正しいシャンプー法を周知しないことに、根本原因があります」

 国際毛髪皮膚科学研究所の井上哲夫所長はそう指摘する。シャンプーしたという人の頭皮をマイクロスコープで見ると、汚れが残っているケースが多い。

「洗い方が間違っているとどんなにシャンプーを変えても満足できない」(井上所長)

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