
右肩上がりの時代なんてもう来ない、という話をよく聞く。本当にそうなのだろうか? 実は身近に、30年にも及ぶ「どん底」から抜け出して絶好調を迎えている業界がある。日本映画だ。2016年の日本映画界は、「君の名は。」「シン・ゴジラ」を筆頭にメガヒットが次々に生まれた。「なぜか」を取材してたどり着いたのは、小さな決断を積み重ねた末の5つの大きな決断。「AERA 2017年1月2日・9日合併号」では、その決断の一つ一つがどうなされたのかを徹底取材。ロケツーリズムや監督と俳優の人脈図など、「日本映画」を大特集。
お金を集め、スタッフを選び、公開時期や方法を決め、宣伝にも責任を持つ。映画の究極の裏方。なかでも、ヒット作を連発するスーパープロデューサーの思考回路に迫ってみたい。日テレ・アックスオンの枝見洋子さんを取材した。
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いつの時代も理解されづらい、そんな「若者」の気持ちを、枝見洋子さん(30)は代弁してきた。
初めて企画した「桐島、部活やめるってよ」(12年)では、スクールカーストを描き、日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ、その年の映画賞を総なめに。ドラマ「ゆとりですがなにか」(日本テレビ)であぶり出した若者の葛藤は、ゆとり世代という言葉にリアルな実像を与え話題を呼んだ。
映画最新作となる「アズミ・ハルコは行方不明」は蒼井優演じるOLの失踪事件をきっかけに、アラサー、ハタチ、女子高生と、3世代の女性の人生が交差する青春ガールズムービーだ。
「見終わった女の子が『強気』になれるものを目指しました。ヤクザ映画を見た男性が、肩で風を切って映画館を出てくるようなイメージです(笑)」
若手が育たないと言われる日本映画界の中で今作は、監督の松居大悟、主演の蒼井、プロデューサーの枝見さんの全員が同学年なことも話題を集めた。
「若者を突き動かすような新しいものは、若い世代がつくっていくべきだと思うんです」