オーエックスエンジニアリング「パラ選手をメカで支える」オーエックスエンジニアリング 陸上競技担当小澤徹(46)撮影/伊ケ崎忍
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オーエックスエンジニアリング
「パラ選手をメカで支える」

オーエックスエンジニアリング 陸上競技担当
小澤徹(46)
撮影/伊ケ崎忍

 アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。

【ニッポンの課長フォトギャラリーはこちら】

 現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。

 あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。

 今回はオーエックスエンジニアリングの「ニッポンの課長」を紹介する。

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■オーエックスエンジニアリング 陸上競技担当 小澤徹(46)

 その工場は、緑の山々に囲まれた風景に溶け込んで目立たない。しかし、ここオーエックスエンジニアリング(千葉市)は、パラリンピックに出場する日本人選手には有名な場所だ。1996年のアトランタ大会からレース用車いすを製作。車いすテニスの世界チャンピオン国枝慎吾、上地結衣両選手が使うテニス用車いすも大切に手作りされている。

 小澤徹=写真左端=は99年からレース用車いす担当になり、現在は設計から加工、溶接まで全工程を手がけている。選手の力を完全に生かすには、体にフィットする必要がある。そのため、製品は全て、選手の障害の程度や体格に合わせたオーダーメイド。受注から納入まで通常、2~3カ月かかる。

「今まで千台ほど作ってきましたが、同じ寸法のものは一つもありません」

 大の自転車好き。高校2年生の夏休みには、バイトでためた20万円を握りしめて独り、1カ月で北海道を1周する自転車の旅に出た。卒業後は、自転車の卸業者に就職した。91年には千葉工業大学(夜間)に入り、働きながら4年間通学。その後、現在の会社に転職した。シドニー大会を2年後に控え、新しい車いすを作ろうとしていた。

 レース用車いすは一つの前輪と二つの後輪からなり、全長は180センチ前後。今年のリオ大会で使用されるタイプは小澤が主に開発し、前後輪をつなぐフレームの形をT字からV字に改良した。

「T字では正座する形でしか乗れなかったものが、V字にすることで左右の車軸の間に足を通せるようになりました。それで乗車姿勢の自由度が上がり、より多くの人が使えるようになったんです」

 9月7日に始まるリオ大会では、陸上競技日本代表選手8人の車いすを手がける。東京大会が決まった13年ごろからは受注が途切れず、息つく暇なく年間80台ほどを生産している。

 8月末、自身もリオへと飛び立った。選手が現地で力いっぱい戦えるよう、メンテナンスに全力を注ぐつもりだ。

(文中敬称略)

※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです

(編集部・小野ヒデコ)

AERA 2016年9月12日号