●長期勾留は人権問題
一方、捜査関係者は威力業務妨害容疑を念頭にこう言う。
「沖縄には基地のゲートが至る所にあります。目に余る違法行為は小さな芽のうちに摘み取っておくということです」
基地のゲート前にブロックを積み上げる抗議行動が定着し、他の基地にも波及すれば県警の限られた人員では対応できなくなる。そうした懸念から立件方針は以前から固めていたものの、このタイミングでの捜査着手となったのは、「あくまで捜査態勢の問題」だと強調する。
沖縄には反基地運動に対応するため県外から数百人規模の警察官が派遣されている。ただ、公判維持も見据えた「身柄事案」の対処は短期ローテーションで派遣される要員に任せるわけにはいかない。また、市民側には強力な弁護団がサポートするため、事件の悪質性や組織性など検察が求めるハードルも高くなる。このため、うかつには強制捜査に乗り出せなかったという。
ではなぜ今なのか。政府は高江のヘリパッド建設を年内に終える方針だ。その後は県外の警察官派遣も見通せないと判断し、立件を急いだ可能性も否定できない。だが、山城議長の長期勾留は人権問題にもかかわる。
今回捜索を受けた沖縄平和運動センターは1993年、沖縄のローカル政党「沖縄社会大衆党」と社民党に連なる労組などが結集して発足した。大城事務局長は「辺野古での工事再開を前に、危険な団体だという悪いイメージを世論に浸透させるのが狙いではないか」と捜索意図を探る。
政府は辺野古のキャンプ・シュワブ陸上部の工事を近く再開する見通しだ。「政府に逆らう国民は力でねじ伏せるということなのでしょう」(大城事務局長)
「遠くの出来事」では済まないことを、「本土」も認識しておく必要がある。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2016年12月19日号