
大学が、世間と隔離された「象牙の塔」と言われたのはまさに「今は昔」。国からの補助金も削られ、若年人口も減少する中、自ら「稼ぐ」ことなしに生き残りを図れない傾向が強まっている。働く環境の悪化に苦しむ教職員。経営難の地方私大の中には「ウルトラC」の離れ業で大逆転を狙うところも出てきた。そんな大学の最新事情を12月19日号のAERAが「大学とカネ」という切り口で特集した。
40歳で年収1千万円超。定時勤務で休みも取れるそんなイメージがあった「大学職員」というお仕事。今、そんな現場に変革の嵐が吹き荒れている。
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そういえば、だいぶ変わった。職員の顔ぶれを見て、東京都の私大職員の女性(37)は思う。
大学院や留学を経て、新卒として入職して11年あまり。当時は就職氷河期で、優秀な先輩や同期が就職活動に苦労し、就職後は過酷な就労環境にさらされるのを見てきた。
自分は体力があるほうではないし、競い合うのも苦手。
「学生時代に大学の図書館でアルバイトをしていました。職員はあくせくしておらず、物腰は丁寧で、定時にきっちり帰る。そういう『大学らしい』環境に引かれたんです」
だから、この職場を選んだ。
ところが、配属された先の課長は、当時は珍しかった企業出身者。大学らしい働き方を全力で否定する、企業系大学職員の先駆け的存在だった。
「定時で帰れることはなく、あらゆることにダメ出しをくらいました。いわゆる『しごき』だったのかもしれませんが、1、2年目は本当につらかった」
●崩れる年功序列
新人に業務を教えるという土壌がなかった。
経理課に配属された同期が、泣きながら仕事をしているのも見た。入職1年目で補助金の申請業務を担当していた。
「学部のことを理解していなければ務まらない。新人がやれる仕事ではなかったと気づいたのは、かなり後になってからです」