人気の秘密は、テクノやハウスといったジャンルの音楽とは無縁の一般の音楽ファンでも、最後にはいやがおうでも両手を高く掲げ、幸福感に包まれてピョンピョン飛び跳ねてしまう親しみやすい音楽性だろう。

●集まって一つになる

 2人の創作活動も今年で36年目。最近は「お互いが大嫌いでも優れた作品は作れる」という境地にまでたどりついた。

「相手の顔も見たくないって状態だったことは何度もある。でも続けてきた。2人なら、一人では絶対に作れない、この世を超越した音楽が作れるとわかっているから。バンドってさ、みんなをハッピーにするすごい曲を作っても最後にはケンカして解散してしまう。言いたいのは、あんたたちの仲が悪いなんてお客さんにとってはどうでもいい、大事なのは音楽なんだから!ってことだよ(笑)」

 取材はちょうど米大統領選の投開票日で、つい床屋政談に。

「EU離脱もトランプ当選も政府から声を聞いてもらえない人たちの叫びだったんだと思う」

 そんな世界で、Underworldの役割とは?

「厳しい生活の合間でのパーティーだよ。ライブに集まる何千人もの人たちはたぶん、政治信条も肌の色も国籍も違う。でも音楽が鳴っている90分間だけは、違いを忘れてひとつの笑顔の集団になる。人類のポジティブな面だけを見せてくれるんだ。音を鳴らすのは僕たちでもオアシスでもストーンズでもいい。大事なのはいろんな人たちが集まって一つになることなんだよ」

(ライター・鈴木あかね)

AERA 2016年12月5日号