今季の浅田真央は、グランプリシリーズ・スケートアメリカで6位。フランス杯では自己ワーストの9位。まだ手応えをつかめずにいる。
26歳の頬を、大粒の涙が伝った。自己ワーストの9位に終わったグランプリ(GP)シリーズ・フランス杯での浅田真央。試合後、絞り出すような声で胸の内を吐露した。
「すべてがしっくりいっていない。自信がすべて失われた」
絶不調の原因は、左膝の痛みだ。トリプルアクセルの踏み切りで負荷がかかるのが左膝。ジュニアの頃から10年以上、トリプルアクセルを跳び続けてきた浅田は、普通の選手以上に左膝への負担が蓄積している。
●ベテラン選手の戦い方
コーチの佐藤信夫は言う。
「けがという状態ではなく、痛みがあるので練習を60~70%に抑えている。けがをしたらまた『練習を休まないと』となり、もっと困るから」
つまり、致命的なけがをしないために練習量を落とし、それがジャンプの不調につながっているという状況。10月のスケートアメリカで浅田は、
「自分の最高のレベルまで挑戦できる状態になっていない」
と、練習不足を理由に大技トリプルアクセルを回避した。6位になると、こう悔しがった。
「フランス杯ではトリプルアクセルもやるくらいの気持ちで練習します」
フランス杯までの3週間で、
「ジャンプも滑りもすべてがしっくりいかなかった」
と言うほどさらに調子が落ちて、これがそのまま結果に出た。
もちろんベテランの選手には、十分な練習ができなくても経験を生かして本番で力を発揮したり、そもそも試合数を絞ったりする戦い方もある。
実際、同様に左膝痛を抱えたイタリアのカロリーナ・コストナーはソチ五輪前年のGPシリーズを休養し、27歳で五輪の銅メダルをつかんだ。韓国のキム・ヨナも、バンクーバー五輪後はGPシリーズに出場せず、いきなりソチ五輪で銀メダルを獲得した。練習量や試合数を極限まで絞ることで、けがや痛みとうまく付き合えたのだ。