アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は東海旅客鉄道の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■東海旅客鉄道 総合技術本部 技術企画部 海外高速鉄道プロジェクトC&C事業室 担当課長 緒志智子(46)
日本の新幹線の技術を導入し、台湾が高速鉄道を開業してから9年。JR東日本・東海・西日本・九州が発起人の一般社団法人国際高速鉄道協会(IHRA)が今年5月、台湾で3日間、国際会議を開いた。これから高速鉄道を導入しようとする国に、日本型の高速鉄道システムの優位性や実績などを理解してもらうのが目的だ。
JR東海で緒志智子が所属するC&C(Consulting and Coordination)事業室の業務は、海外での高速鉄道プロジェクトへの対応で、IHRAの事務局も務める。
台湾での会議では、インド、シンガポール、マレーシア、タイ、オーストラリアなどの要人に、高速鉄道の現場を見てもらいながら、どんな課題があるのか、どのような経済効果があるのか、日本型高速鉄道の良さは何かなど、さまざまな議題が話し合われた。緒志は会議の計画から実行まで、すべてを仕切った。
「ヨーロッパや中国など、世界には日本と異なる高速鉄道がありますが、高速鉄道の導入を検討するときに、日本型が俎上に載るようにするのが役割です」
青山学院大学卒業後、1992年にJR東海に入社。京都観光の宣伝や、出向先のジェイアール名古屋タカシマヤの販売促進などを担当。2001年からは東京駅の開発に携わり、八重洲口にある東京駅一番街の開業準備なども手掛けた。
11年には1年間休職し、米マサチューセッツ工科大学Sloan Fellows Programへ留学してMBAを取得、3年前に今の職場に来た。
新幹線の最大の売りは、半世紀にわたって安全に運行してきた実績だ。
「高速旅客鉄道用の専用線と、ATC(自動列車制御装置)を導入して、安全で高頻度の大量高速輸送を実現する日本型のシステムのメリットを正しく理解してもらえれば、このシステムが適した国に必ず選択してもらえると思っています」
日本の新幹線が世界各国で走る日は、きっとそう遠くはない。
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・大川恵実)
※AERA 2016年8月8日号