映画「シン・ゴジラ」が、米国についに上陸。劇場でゴジラ対策をゴリ押しする「かの国」政府と、翻弄される日本政府が描かれる。米国の人たちはどう観たか。
10月11日の「シン・ゴジラ」封切りの夜、ロサンゼルス(LA)市内の大きな映画館に駆けつけた。午後7時半からの上映だが、ゴジラのポスターや宣伝はどこにも見当たらない。行列の写真を撮影するよう編集部に頼まれたが、LAでは行列は特になし。米国封切りは拍子抜けするほど静かだった。
だが同館のネット予約では当日券の7~8割がすでに販売済みだった。実際、席の選択はかなり限られていた。LAの他館では当日券が完売したところもあった。
●トーホーと歓声あがる
「ネットで批評を読んで、ひと月前から楽しみにしていた」と言うのは、LA在住のゼイドク・スティオーノさん(45)とケンジ・コバヤシさん(52)。共にSF映画ファンだ。
「ゴジラのCGがどう仕上がってるかが一番の楽しみ」とスティオーノさん。日本生まれ、米国育ちのコバヤシさんは、「ハリウッド版のゴジラも悪くなかったけど、やはり元祖・東宝ゴジラへのリスペクト(尊敬)は強い。今作の監督は名前も知らないが、オリジナルをどう新作に生かしているか楽しみ」。
上映スタート。「東宝」の文字が画面に映ると「トーホー!イエーイ!」の声と拍手が。
1954年の「ゴジラ」で伊福部昭が作曲した、重厚なテーマソングが劇場内に響く。音楽に聴きほれていたLA在住のミュージシャンのデイブ・プロボストさん(60)が、こう絶賛した。
「ゴジラのテーマソングは映画音楽の中でも最高傑作のひとつ」
映画の内容については「日本政府が会議ばかりして何も決められないのを風刺していて笑えた。最後の凍結するゴジラのシーンは、まるでダリの絵画のように神秘的だったね」。
彼の友人で映画業界で働くシンディ・ジーンさん(55)は、
「最初のシーンで、地面をはいながら体液を出しているゴジラは一瞬トトロかと思った。電車爆弾が最高ね。カメラワークも東京の街を引きやアップで見せていてすごく良かった」
2人が興味津々だったのは、「福島原発事故の時も、日本政府があそこまでスローな対応だったのか、それとも実際はもうちょっとマシだったのか」という点だ。政府に集められた日本の科学者や専門家たちが一様に変わり者だったところもウケたようで、場内からは笑い声が上がった。