●「春画」が描く対等の性
湯山:確かに、日本人は工夫するのが好きですよね。春画もそう。タコと絡んだり、張形を作ったり。性を人間の営みというよりも、遊戯的に捉えている傾向にありますね。
松本:その春画展が絶大な人気を誇っているというのが、女性の性に対する考え方を端的に表していますよね。セックスやオナニーは楽しいもの。支配的でなく、男女対等な関係の性として描いているからウケた。チンコに着物を着せてみたりしているのも面白い。本当、僕も着せてほしいぐらいですよ(笑)。
湯山:性において男女平等になれば自然とセックスレスも解消されるかもしれないけど。ただ、もはやセックスは“贅沢品”。若い人たちはデートをしてセックスへ……ということができなくなっているし、夫婦になると「家族だから」と、近親相姦に似た心理的ロックがかかってしまっている。『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した村田沙耶香さんが昨年、『消滅世界』という作品を発表したんですけど、結婚した男女のセックスは近親相姦になるからと、人工授精で子どもをつくるようになった近未来を描いているんです。生殖行為と性行為を分離した世界。下手すると、日本は『消滅世界』のようになりますね。
松本:セックスをしたほうが、人生楽しくなるんですけどね。
湯山:生命を楽しみ尽くすならばマストですね。性的に豊かな人のほうが人間的に魅力のある人が多いんですよね。
(構成/ジャーナリスト・田茂井治)
※AERA:2016年10月24日号