深刻化するセックスレスと日本人はどう向き合うべきか? オナニーのイメージを一新したTENGA・松本光一社長と、性に開放的な著述家として知られる湯山玲子氏が大放談!
湯山:松本社長は日本の性についてどう考えていますか?
松本:僕は夫婦でもカップルでも、お互いに“レス”で構わないなら、それでいいという意見です。でも、片方が不満を持っているなら、それはよくない。「TENGA(テンガ)」のビジョンは「みんなの性生活を豊かにする」。性欲は本能的で、食欲などと変わらない誰もが持っているもの。オナニーも95.4%の人がしている、ハミガキと変わらないぐらい当たり前の行為なんです。なのに、オナニーはもとより、セックスに関しても卑猥でわいせつなイメージが根強くある。
湯山:私たちの世代のこの類いの性具って、こんにゃくを温めて使う……みたいな、日陰の存在だった。だけど、テンガはデザインとコピーが洒落ていて、まるでスニーカー感覚。
●女性を支配する構図
松本:それまでのアダルトグッズは男の願望そのものを形にした製品が多かったですね。AVも同じで男性の日常ではかなえにくい願望を映像でかなえている。だから、女性を支配する構図のものが多い。テンガはそこが違う。女性を支配するのではなく、男女仲良くフレンドリーにっていうのが根底にある。
湯山:「支配的ではない」というのは重要ですね。セックスの快楽は多様なのに、AVも含め、官能小説などのオナニーネタは支配と被支配の物語が大半。「おれのもので女の子をヒーヒー言わせる」っていうような、男根主義的なセックスに当の男性自体が嫌気が差し始めていると思う。社会学者の古市憲寿さんは「セックスが嫌だ」と言ってるのだけど、それは女の人を軽蔑したり、欲望のネタにしたりするのが嫌なのだと思う。女性を下に見ているからこそ勃起するという脳の回路が。だから、セックスはしたくないと。これはテンガにも通じるところがある。人間の欲望回路から生まれるリビドーを明るく書き換えた。