「たとえばサイズ感です。昔の和菓子は、たっぷりと食べられるものが好まれました。最近は、いろいろな味を少しずつ楽しみたいという女性が多い。今回、最中(もなか)もごく小さい貝の形をした皮ではさみ、少しだけ餡がのぞいています。これは職人泣かせで、餡が乾いてしまうのですが、かわいさを出すために苦心して完成させました」(同)
男性が中心だった菓子職人の世界に近年、女性が増えてきたことも、和菓子の変身の背景にありそうだ。同社では製造部にある八つの課のうち、五つに女性職人がいる。とりわけ生菓子課への配属者が増え、15人中5人にまでなったという。
今年3月まで菓子職人として働いていた同社広報の浅井慎也さんはこう話す。
「商品開発などで、男性にはわかりにくい『カワイイ』という感覚が、女性の職人を通して取り入れられるようになってきました。その結果、だんだんと男性も『これがカワイイ、か?』と、考えるようになりました」
「和菓子 結」では、ういろうとハーブを組み合わせたものや、夏野菜のピューレとこし餡を合わせたものなど、新しい素材や作り方にも挑戦している。
「両口屋是清が木の幹だとすると、結は枝のようなもの。新しいことにチャレンジしますが、幹とはきちんとつながり、ぶれないようにしていきたいと思います」(近藤さん)
●各地の文化とコラボ
室町時代後期の京都で創業した虎屋が、明治天皇とともに東京にも進出したのは1869(明治2)年のこと。日本を代表する菓子舗として目される虎屋だが、和菓子に関する史資料の収集・研究・研究誌の発行などをする「虎屋文庫」や、ギャラリーの運営、文化活動にも熱心なことで知られている。
海外からの観光客も多く集まる東京ミッドタウンの店には、喫茶とともにギャラリーが併設されている。07年3月のオープンから、これまでに40回以上の展示を開催。14年からは企画展に加え、日本の伝統的な食まわりの道具を展示販売する「とらや市」をスタート、10月6日からの4回目は「鍋と釜」がテーマだ。
企画担当の橋本恒平さんにコンセプトについて聞いてみた。「和菓子にとどまらず、器や郷土玩具、落語など、広く和について紹介しています。直球、変化球とおりまぜていますが、軸となっているのは日本文化です」