出身作家の数や登場回数では、早稲田大学が圧勝
出身作家の数や登場回数では、早稲田大学が圧勝

 名門私大として、事あるごとに比較される早稲田と慶応。出身作家の数や登場回数では、やはり早稲田が圧勝だった。

 1980年代、堂々たるヒロインが早大に登場する。橋本治のデビュー作『桃尻娘』の主人公・榊原玲奈だ。シリーズ全6部のうち、第3部『帰って来た桃尻娘』で、毒舌のヒロイン・玲奈は1浪ののち早大入学、大学名はもちろん、キャンパスの様子も描写される。

 具体的な学校名は書かれないものの、作中の描写から早大と推定される作品も多い。三浦しをん『格闘する者に◯』、『空飛ぶ馬』に始まる北村薫「円紫さんと私」シリーズ、恩田陸『チョコレートコスモス』など。

 学生運動が華やかだった時代を回想するのは、鴻上尚史『ヘルメットをかぶった君に会いたい』や芦原すなお『雨鶏』。前者はかなり克明に当時の事件や社会風俗を描いている。

 慶應を舞台にした小説は意外に少ない。その中で話題になったのが、桐野夏生『グロテスク』だ。付属の慶應女子高をモデルにしたと言われる。

 愛校心が強い慶應を舞台にした小説が少なく、「大学の話題はそれほど」な早稲田の小説がゴロゴロ。これで村上春樹がノーベル文学賞を取ったら、私大出身者初で、これまた差をつけられそうだ。(ライター・矢内裕子)

<出身作家が多いのは……?>

『チア男子!!』
朝井リョウ(著) 集英社文庫
大学1年の晴希は、怪我を理由に柔道をやめ、大学チア初の男子チームを結成。朝井は早大卒

『東京エイティーズ』(全11巻) 
安童夕馬原作 大石知征画 小学館
大手広告会社で働く真壁純平。元恋人が親友の死を連絡してきて、20年前の早大時代を振り返る

『シューカツ!』
石田衣良(著) 文春文庫
学内の仲間とチームを作り、最難関マスコミへの全員合格を目指すが──直球の青春小説

『グロテスク』(上・下)
桐野夏生(著) 文春文庫
本作に登場するQ女子高のモデルが慶應女子高と言われ、内部生と外部生の階級差別などが描かれる

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