前列右から銀塩派だった北野さんの認識を変えさせたコニカミノルタディマージュZ5と、いちばん思い出がつまっているというキヤノンAE-1。後列が憧れのドイツカメラ、コンタックスTvsとローライXF35、そしてペンタックスのコンパクトカメラシリーズとして人気があったエスピオ115M
前列右から銀塩派だった北野さんの認識を変えさせたコニカミノルタディマージュZ5と、いちばん思い出がつまっているというキヤノンAE-1。後列が憧れのドイツカメラ、コンタックスTvsとローライXF35、そしてペンタックスのコンパクトカメラシリーズとして人気があったエスピオ115M
朝5時に撮影したアンコールワットの朝焼け。北野さんの奥さんが、パソコンの待ち受け画面にしているという
朝5時に撮影したアンコールワットの朝焼け。北野さんの奥さんが、パソコンの待ち受け画面にしているという
「東洋のモナリザ」と呼ばれる女神像で知られるバンテアイスレイ遺跡。縦横の直線を重ねた構図に、元カメラ小僧と自称する北野さんのセンスがあふれている
「東洋のモナリザ」と呼ばれる女神像で知られるバンテアイスレイ遺跡。縦横の直線を重ねた構図に、元カメラ小僧と自称する北野さんのセンスがあふれている
NHKテレビ講座の成果という「流し撮り」でとらえた4人乗り(!)のオートバイ。服装や背景など色合いがきれいだ。古都シエムリアップで撮影
NHKテレビ講座の成果という「流し撮り」でとらえた4人乗り(!)のオートバイ。服装や背景など色合いがきれいだ。古都シエムリアップで撮影

――今年、デジタルカメラのテレビ講座に出演されましたね

 NHK「趣味悠々 デジタルカメラ入門」に出演したおかげで、デジタルカメラを見直しました。じつは過去に苦い思い出がありましてね。2003年3月にグランドキャニオンを旅行したとき、初めて購入したコンパクトデジタルカメラを持って行ったんですが、いざ撮影しようとしたらバッテリー切れで撮れない。代用はないし、頭にきちゃってね。帰りに「もう、いらない」って娘にあげちゃいました(笑)。取扱説明書に「デジタルカメラの電池はすぐになくなります」って書いてほしかったですね。それからしばらくはデジタルカメラに興味を持てなかったんです。NHKから出演の話があって、久しぶりに触ってみると機能も向上しているし、大変勉強になりました。

――見直した点とは

 従来のフィルムカメラに比べて、デジタルカメラは暗さに強い。驚きました。その利点を生かして、ストロボを使わずに撮ると写真に温かみが出ます。接写ができるのも大きいですね。さらに消せるから何枚でも撮れる。デジタルカメラのよさは、この3点だと思います。

 ぼくが使っているコニカミノルタディマージユZ5は、35~420ミリのズームレンズで手ブレ補正機能がある。超望遠で接写もできるレンズは、従来の一眼レフにはなかったんじゃないですか。元カメラ小僧としては、本当は三脚を立てられる上級機がほしかったんですが、女房に「私も使える軽いカメラにしてほしい」と言われましてね(笑)。お互いの要望の中間をとったカメラ選びなんです。Z5はきちんとファインダーをのぞいて撮影できるし、画像がきれいなのでいいカメラだと思っています。

――最初のカメラは

 中学2年生のときのリコーフレックスです。すでに働いていた長男が、新しいもの好きで買ってくれました。よく撮れるカメラでしたね。今回探したんですが、見つからないんです。あるはずなんですけど残念ですね。高校生のときは自宅に暗室を持っているお坊ちゃんの友達がいて、そこで現像を楽しんでいました(笑)。このときに初めて「気泡」という言葉を知ったんです。生意気にセコニックの露出計を使ってシャッター速度を遅くして被写界深度を深くする、そこが腕の見せどころだとか言ってましたね。いまのようにカメラ任せにはしなかった。露出もピントも自分で判断していました。だから、デジタルカメラには抵抗があったんですね。元カメラ小僧として、プライドが許さないみたいなところがあった。(笑)

――その後のカメラ遍歴は

 車や電気製品などドイツ製品に憧(あこが)れがあったので、ローライXF35やコンタックスTvs。そして思い出深いのがキヤノンAE-1。バシャッというシャッター音が好きでね、いかにも撮っているぞという気分になる。いいものは、いい音がする。音は、品質に深くかかわると思っています。ぼくはたばこを吸わないけど、ダンヒルのライターのフタやベンツのドアを開閉するときの音には高級感を感じます。同様にシャッター音は、カメラの品質にかかわっています。

――いまやデジタルカメラを満喫されてますね

 今年のゴールデンウイークはZ5を持って、アンコールワットを見るためにカンボジアを旅行してきました。ここでも番組出演の成果が出ました。「東洋のモナリザ」と呼ばれる女神像があるバンテアイスレイ遺跡の写真は、構図がいいと番組で講師をした川合麻紀さんに褒(ほ)められました。またシエムリアップ市街では、4人乗りしているバイクの流し撮りに成功。この2枚は優秀作品に選んでいただきました。うれしかったですね。デジタルは自宅で手軽に引伸しができる。これはすばらしいことですよ。カンボジアで撮った写真は額装して、自宅に飾ろうと思っています。デジタルカメラのよさを知ったおかげで、カメラ熱が再発しました。(笑)

※このインタビューは「アサヒカメラ 2005年9月号」に掲載されたものです