●車いすと一体化する
「緻密さ」「和」が特徴の現・男子日本代表チームは、「Jキャンプ」が核になっている。男子代表のヘッドコーチ、及川晋平が理事長を務めるNPO法人Jキャンプが01年から行う、国内外のコーチやトップ選手を招いた合宿や海外研修のことだ。
日本代表の二枚看板、香西宏昭(27)と藤本怜央(32)も、それぞれ競技を始めた頃に参加した。そのとき講師として招かれていたのが、シドニー・パラリンピックでヘッドコーチとしてカナダ代表を優勝に導いたマイク・フログリーだ。米イリノイ大学に留学した及川の恩師でもある。
フログリーは2人に、各場面での車いすの位置、角度、相手との距離など細部にまでこだわる緻密なバスケを教えた。13歳だった香西は「イリノイ大学に来い」と誘われ、高校卒業後に渡米。フログリーの緻密なバスケを習得し、全米大学リーグで2年連続MVPにも輝いた。卒業後の13年8月から、ドイツリーグのBGハンブルクでプロとしてプレーしている。
翌年、藤本も同じチームに加入。ドイツ行きを決めたのは14年の世界選手権で韓国に敗れ、このままでは、リオの切符をつかめないという危機感があったからだ。
「僕と宏昭が理想とするバスケを共有し、2人が連携しなければと思ったんです」(藤本)
大学1年から車いすバスケを始めた藤本にとって、生まれつき両ひざから下がなく、小さいころから車いすに乗る香西の動きは脱帽もの。
「車いすと一体化していて、僕らとは動きがまったく違う。宏昭とは1対1ではとても勝負ができない」
一方、小学3年生の時に交通事故で右足を切断した後も、バスケを教えていた父親の影響で健常者に交じって競技を続けてきた藤本を香西は、
「怜央くんはシュート力に加えて、プレー中の視野が広く、相手に合わせるのがうまい」
同じチームでコンビネーションを磨いて1年半。2人のスムーズな連携が軸になり、15年秋のアジア・オセアニア選手権では、3位決定戦で3連敗中だった韓国を破り、リオ・パラリンピックへの出場権を手にした。