スリーエムジャパン 常務執行役員島田正志さん(59)「産業が成熟した日本では、いままでの延長線上では長期的な成長が望めない。15%カルチャーからは革新的な事業が生まれやすい」(撮影/鎌田倫子)
スリーエムジャパン 常務執行役員
島田正志さん(59)
「産業が成熟した日本では、いままでの延長線上では長期的な成長が望めない。15%カルチャーからは革新的な事業が生まれやすい」(撮影/鎌田倫子)
スリーエムの創業初期に生まれたサンドペーパー。実は間違えて採掘した石から生まれた商品だ(撮影/鎌田倫子)
スリーエムの創業初期に生まれたサンドペーパー。実は間違えて採掘した石から生まれた商品だ(撮影/鎌田倫子)
オウケイウェイヴ社長兼元謙任さん(49)「自分の小さな失敗をQ&Aサイトに書き込むのは助け合いの精神から。経験を役立てたいからです」(撮影/鎌田倫子)
オウケイウェイヴ社長
兼元謙任さん(49)
「自分の小さな失敗をQ&Aサイトに書き込むのは助け合いの精神から。経験を役立てたいからです」(撮影/鎌田倫子)

 人間は失敗する生き物。だから、失敗を完全に排除することはできない。大切なのは「失敗しない」より、「失敗から学ぶ」ことだ。

 これをそれぞれに合う形で実践し、成果を上げている企業がある。

 ITベンチャーの雄、サイバーエージェントには、会社として大切にしている言葉がある。

「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを」

 上場し、大企業となって、この4月には創業以来の価値観や行動規範をまとめたものを大幅に改定したが、この文言だけは残した。グループ社員がそろった総会で藤田晋社長(43)が、

「大事なことだ」

 と明言したという。

 実際、社内では事業に失敗した責任者が、新事業で重要なポジションに就く再チャレンジが珍しくない。失敗から学んだ人は、同じ過ちを繰り返さない。そう思われているからだ。

 現在、子会社のマッチングエージェントで社長を務める合田武広さん(28)もその一人だ。

●新規事業の打率UP

 サイバーエージェントの内定者だった2011年11月に、内定者仲間4人でスマートフォン向けの事業を立ち上げた。同社はこれを子会社化。合田さんは学生ながらビジネスコンテストで優勝し、メディアにも取り上げられた。

「自分たちの好きなことをやる。それが正しいんだ。当時はそんな心境でした。天狗(てんぐ)になっていたのかもしれません」

 ところが、実際に会社を立ち上げてみると、コンテストとは要領が違って利益が出せない。もっといいサービスにしようと努力したが黒字化できず、1年半で会社の清算を命じられた。

「学生気分が抜けていなかった。たくさんの仲間を裏切ることになってしまった……」

 合田さんにとっては、人生に絶望するほどの失敗。しかし会社は、再び同じ領域で合田さんにチャンスを与えた。

 13年にスマートフォン向けの新しいサービスでいまの会社を設立。いわゆる「出会い系」とは違う、「インターネット上でのクリーンな出会い」のための恋活(こいかつ)アプリを提供している。ユーザー数も増え、順調に利益を生み出している。

 合田さんは言う。

次のページ