さらに、英不動産ファンドの5割以上が解約停止に追い込まれたことで、6日にはポンドが再度急落した。ロンドンの金融街シティに拠点を構える金融機関が英国外に移転すれば不動産市況が悪化するという見立てから、投資家らが一斉に解約に動いたのだ。
「リーマン・ショックが急性心筋梗塞なら、Brexitは慢性疾患。一つの病巣を手術で摘出すれば治るものではない」
スイス銀行などで貴金属ディーラーとして活躍した金融アナリストの豊島逸夫氏は、現在の状況をこう表現する。「慢性疾患」が意味するところは、英国で顕在化し、欧州全域に蔓延しつつあるEU悲観論だ。リーマン・ショックを引き起こしたサブプライムローンとは異なり、思想の問題であるがゆえに根が深いというのだ。それだけに、マーケットの低迷は長期化する可能性が高い。当然、日本への影響も免れない。
●変動金利型国債に注目
「英国のEU離脱交渉の開始が9月に延期されたことで、9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げはなくなった。円高進行は避けられず、1ドル=90円も視野に入ってきた。日経平均は1万4千円割れも時間の問題」(ファイナンシャルリサーチ代表の深野康彦氏)
このように、マーケット関係者の見方は目先、円高株安で一致している。そのため、「面白みはないが、短期的には円を現金で保有するのが最も賢い選択」(豊島氏)だという。ただし、さらに安全を期するならば、変動金利型の個人向け国債「変動10年」が堅い。
「銀行預金よりも安全なうえに、元本割れのリスクもない。加えて、マイナス金利下でも0.05%の最低金利保証がついており、定期預金の利率(5年で0.02%程度)より高い」(山崎氏)
リスクをとれるなら、日本株にも投資妙味はある。
「株価の低迷で配当利回りが5%を超える銘柄が続出している。輸出系企業は円高に伴う業績の下振れ懸念があるものの、内需関連の減配リスクは限定的。株主優待の利回りを含めた総合利回りが7%を超える銘柄は下値も堅い」(深野氏)
いずれにしても、前提となるのは長期投資。Brexit以降、投資環境が明確に変わってしまったからだ。