PEA濃度が低くなるとうつ病が悪化し、高くなれば寛解状態に近づく傾向がある。川村医師は、PEAは喜びを司る脳内報酬系の働きと関係が深いと考えている。

「うつ病患者の血漿中のPEA濃度は、健常者、統合失調症や双極性障害、不安障害の患者などより低い。診断にPEA測定を採り入れれば、うつ病診断の精度を上げることができます」

 川村医師は11年から、診療にPEA濃度の測定を採り入れ、研究を進めている。これまで約2千人以上を調べたが、9割以上の確率で診断できた。

 客観的な指標があれば、患者の信頼や理解も得やすい。患者からのこんな声もあった。

「他の病院では、医師が話を2、3分聞くだけで、何をどう診断しているのかよくわからなかった。PEAがあると、自分の状態の変化や薬を変えるべきタイミングも、納得できました」

 血中PEA濃度の臨床研究は、うつ病治療を大きく前進させる可能性を秘めている。

(編集部・澤志保)

AERA 2016年6月20日号

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