●自分の娘がわからない

 死ぬことや現実から逃げることを考えていると、子どもたちに伝わるのか、娘が食事を作ってくれたり、息子がマッサージをしてきたりとBさんを案じてくれる。我に返って死を考えたことを恥じるが、死にたいと思う気持ちがまた突然襲ってくるという。

「もっと働けば暮らしが楽になると思うのですが、その方法がわかりません。治療が先と言われても、治ったところで自分に何ができて、稼げるのかもわからないです」(Bさん)

 先の小山さんは、所得が低いと生きるための選択肢が限られるのが問題と指摘する。

「例えば、30万円持っている人の1万円と、17万円持っている人の1万円は、同じ1万円でも価値が違います。収入が増えれば、学校や住まいなどの選択肢は増え、気持ちにゆとりが生まれる傾向があります。一方、収入が低いと、限られた選択肢しかありません」

 都内で娘(5)と暮らすシングルマザーのCさん(30)は、その日暮らしの不安を漏らす。

「子どもの教育や将来に、何の準備もできないのがつらいです」

 4年前に夫のDVや浮気などが原因で離婚し、うつを発症。

 症状がひどい時にゾッとしたのは、娘がわからなかったことだ。どうして自分に娘がいるのか、どうして一緒に住んでいるのか曖昧になったことがあった。

 今も薬を飲みながら治療し、障がい者施設で配膳と食事作りの仕事をしている。だが、パートなので年収は180万円程度。生活をギリギリまで切りつめているが余裕はない。

●国は社会保障の強化を

 お金がない時は、食事は値段が安いパスタばかり。病気のため季節が変わったことに気づかなかったこともあり、娘の服を買えなかったこともあった。娘は特に何も言わなかったが、それがかえってつらかった。

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