フランスの女性監督による映画が、相次いで公開される。自身の体験を昇華させた、力強く、エモーショナルな作品が生まれている。
眩しいほどの太陽の光が降り注ぐなか、人生を悟ったかのような少女たちの眼差しに心奪われる。
6月11日公開の映画「裸足の季節」。本作は、異性とじゃれ合って思いを寄せ合う、思春期特有の心の揺れを切り取った作品とは一線を画す。少女たちは、異性に対する当たり前の感情が許されない世界に生きる。同年代の少年たちと肩車をして遊んでいた少女たちは、?傷物?として家に閉じ込められる。
「このエピソードの一部は、私が実際に経験したこと」
と、デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督は言う。
舞台はトルコの田舎町。古くからの慣習が残る村では、自分の心に素直に生きたければ、闘わなければならない。5人姉妹による、自由と抵抗の物語は、まるで西部劇のように強くて、勇ましい。
●いま生きる世界は?
エルギュヴェン監督は、1978年トルコ生まれ。幼くしてパリに渡り、フランスの国立の映画学校で学び、現在もパリに暮らす。初監督作ながら本作はアカデミー賞フランス代表にも選ばれた。
「映画を撮るうえで考えたのは私たちはいま、どんな世界に生きているのかということ。作品では断片的にしか描いていませんが、大切なのは自分自身の体験について考えることだと思う」
実体験を出発点にストーリーを練り上げ、女性ならではの感性を映像に吹き込んだ。撮影は、奇しくも妊娠という人生のイベントと重なった。
「現場では、少女たちとの間にエモーショナルな空気が流れていた。それは、私が妊娠していたことに関係しているのかもしれません」