中心人物の一人、がん専門の医師で南カリフォルニア大学医学部などで教授を務めたカリード・シェイク氏(77)は、1974年にパキスタンからの移民として米国へ。当時、チノ地区に一つしかなかったモスクで仲間たちと礼拝を続け、朝から晩まで末期がん患者に向き合って治療法を探る日々を送ってきた。

「米国は移民の国。パキスタンの貧しい若者だった私が、イスラム教の神から学んだのは、自らが受けた教育の恩恵を徹底的にシェアして人々に恩返しすることでした」

 トランプ氏に対しては、

「哀れみしか感じない。仮にもこの国の大統領になりたいのなら、感情だけで発言せず、多くの平和的なイスラム教徒たちが米国に貢献してきた事実を知ってほしい」

 米国内に約70の支部があり、日本でも活動するアハマディア・ムスリム協会の米国広報担当、ハリス・ザファール氏は、両親がパキスタンからの移民。自身は米国で生まれ育った。「イスラム教徒は国に帰れ」と言われるたびに、「どこへ帰れと? 私はアメリカ人です」と答えてきた。彼は言う。

「ある調査では、6割の米国人がイスラム教徒と身近に接したことがないという結果が出た。トランプ氏は、そんな米国民に恐怖を吹き込んでいる」

(ジャーナリスト・長野美穂)

AERA  2016年5月16日号より抜粋

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