「グローバル化は全然足りていません。我々の企業だけではなく、日本の企業、日本人全体の問題ですけど、どこかでグローバル化を避けて通れると思っているんじゃないでしょうか」

 柳井にとってグローバル化とは、「必然であり、それをしなければ生き残れないもの」。そこまで強い危機感を持つのは、国内市場の縮小を目の当たりにしてきたからだ。

 同社が急成長したこの四半世紀は、国内のアパレル市場の規模がピーク時の15兆円から3分の2の10兆円に縮小した時期と重なる。ユニクロの登場で衣料品の価格が下がった側面もあるが、人口減少で、需要そのものの縮小は避けられない。

 もう一つ、柳井が強く意識するのは、LCC(格安航空会社)やスマートフォンの普及による「国境と情報のボーダーレス化」だ。それが消費者の意識や行動にもたらす変化を、身をもって感じてきた。著書『経営者になるためのノート』で指摘する。

「自分たちが一年中、自分たちの商品やサービスのことばかり考えている間に、お客様は世界中のいろいろな商品やサービスを研究され、体験されています。今の世の中、本当に基準が高くないといつ振り落とされるかわからない時代になっています」

 柳井が指摘する事象は決して目新しくはない。しかし、その言葉の端々ににじむのは、「あなたは現実を『知っている』のではなく、『知っているつもり』なだけではないのか」という問いかけだ。(アエラ編集部)

AERA 2016年4月11日号より抜粋

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