インターンのうち、一定の水準を満たした成績優秀者には、期限内ならいつでも同社に入社できるパスが手渡される。例年、パスを手にするのは参加者の1~3割。パス保有者のなかから、実際にワークスに入社するのは、6割程度という。
「自社の採用という観点から見れば、こうしたインターンシップは効率が悪いのかもしれない。しかし私たちは、現在の学校教育の枠内では、ビジネスの最前線で活躍するイノベーターは育成できないのではないかという問題意識を持っている。採用のためでなく、日本全体の人材育成の場としてインターンを考えているんです」と、広報担当の金田裕美さん(29)は話す。
春と夏に行われる通常のインターンでは、「世界の美術館で働く人がワクワクするアプリを考えよ」など、与えられた課題に応じた解決の方法を考える。20日間の期間中は、ワークスのトップレベルのエンジニアらも加わり、学生たちは彼らと議論しながら多彩な問題解決の方法を身につけていく。ただ、パソコンの前から離れることはない。
そこで、より実践に踏み込んだのが、通常のインターンの内容をさらに推し進めた、ワークス独自の「エクスターンシップ」だ。15年は、インターンで、特に優れた評価を得た25人が参加した。冒頭の吉永さんたちが今回取り組んだのもそれ。今回は、Co.to.hana を含めて三つのNPO法人がワークスに協力した。
学生たちは、これらNPO法人のもとを訪ねてヒアリングを行い、事業のどの部分でどんな課題があるか、その解決のために自分たちが提供できるサービスや製品は何か、といった課題をみつけることから自分たちで行った。決められたプログラムをこなすのではなく、まさにビジネスを一から実践する形だ。エクスターンシップを企画した同社の森田剛史(よしふみ)さん(29)は言う。
「『仮想』の世界から抜け出して、イノベーターを発掘したい。そのために、学生たちには社会に出る前に、自分の手で価値を生み出し、世の中に問う経験をしてほしいと考えたんです」
(アエラ編集部)
※AERA 2016年4月11日号より抜粋