「しがらみが多く、競争原理が働いていない」「都会の情報が少ない」「お客さんのニーズを知ろうとしない姿勢に違和感がある」
こうした不満が次第に募り、それが言葉の端々に表れたのだろう。ある時、勤めていた会社の人にこう言われた。
「やりたいことがあるなら、自分のお金でやりなさい」
この時、起業を決意した。広告などBtoBのビジネスでは、地縁や血縁など既存の関係性が物を言う。笠原さんにそれはなかったが、写真のセンスや技術には自信があった。
「BtoCで、都会の生活を経験した人に選択肢を示そう。都会と佐賀の余白を埋めよう」
狙いは当たった。Iターン、Uターン組だけでなく、海外や東京に住んでいるものの結婚式は地元・佐賀で挙げる、という人たちからの依頼も舞い込んだ。佐賀の仕事が縁で東京でのウェディングパーティーの撮影も頼まれた。6月には、この写真館で働きたいという男性が東京から移り住んでくる予定だ。(アエラ編集部)
※AERA 2016年3月28日号より抜粋