会社員の運命を決めるとも言える「人事」。実力を正当に評価し、その結果として適任のポストが与えられる。それが本来のあり方のはずだ。だが、人間関係が色濃く反映されたり、決して適材適所とは思えない配置があったりと、不本意に思う人も多い。特に、年功序列的な慣習が残る日本の企業では、異例な“抜擢”人事が行われると、周囲との激しい軋轢が生じることもある。
「根底には、嫉妬心があったと思います」と話すのは、都内のイベント関連会社で働く女性(29)。以前働いていたPR会社で営業成績を上げるにつれて、五つ年上で当時31歳の男性のチームリーダーとの関係がおかしくなった。
自社のサービスを利用してくれる企業の新規開拓を任された女性は、持ち前のフットワークの軽さを生かし、次々に成約をものにした。東京育ちなのに、どこか関西を思わせるノリのいい話し方が取引先にもウケた。
営業成績はあっという間にトップに。3カ月後には、チームリーダーの男性が誇示していたひと月あたりの最多売上記録を大幅に更新。チームリーダーに送る日報に成果を書くのが楽しかった。けれど、当初「達成おめでとう!」だったその返信は、日に日にトゲトゲしくなった。
「まぐれだから、実力だと思うなよ」「そんな数字に価値はない」
女性は、週末を気持ちよく過ごすために、金曜日だけは返信メールを開くのをやめた。