授賞式は伝統的に政治的発言を嫌う。なのにここまで振り切ったのは「白人中心の中継を見るな!」との呼びかけがネットでも広まったことへの懸念だ。
広告調査会社カンタールメディアによると、放送権を持つ米ABCは今年の授賞式でCM30秒あたり平均約200万ドルと近年では最高額で広告主と契約。アカデミーの年間収入約1億6千万ドル(昨年6月期)の約7割を占めるのが放送権料を含む授賞式関連だ。映画の「権威」ながら稼ぎはテレビ頼みなのだ。視聴率が下がれば来年の広告料は下がりかねない。だからこそ司会のロックらは、批判を受け台本を黒人向けに書き換えた。
米映画協会によると、2014年の興行収入は米・カナダで104億ドルと前年より5%減。北米市場が縮むなか、海外での興行収入は伸びている。それだけに「海外では統計的に白人以外の映画が受けない」(ニューヨーク・タイムズ紙マイケル・シプリー記者)
現実も白人偏重を加速させている。04年にアカデミー助演男優賞にノミネートされた俳優の渡辺謙さん(56)は語る。
「ハリウッドが本当に世界を牽引していた頃は非常に寛容で、人種を問わず才能ある人が集合体として映画を作っていた。マーケティング重視の今は冒険する余裕をなくしている」
(朝日新聞GLOBE編集部・藤えりか)
※AERA 2016年3月14日号より抜粋