この3年、株価を強引に押し上げてきた「黒田バズーカ」。マイナス金利はその威力の衰えを示しただけでない。世界不安の火に油を注いでしまった。
「アベノミクスはもう終わった。そんな雰囲気が個人投資家たちの間に広がっています。これまでのもうけを確定させて、株のトレードから撤退する人が相次いでいますよ」
ツイッターで1万8千人のフォロワーがいる専業の個人投資家、ぱりてきさすさん(35)はこう話す。
投資家など900人ほどのブログをウォッチし、市場の空気を読む。風向きが一変したと感じたのは2月初めだった。
年明けからの急速な円高・株安を受け、日本銀行が1月29日、「マイナス金利政策」という新しい金融緩和手法の導入を決定。それから日経平均株価の終値は2日連続で上昇したもののすぐに下落基調へ戻り、2月12日には1年4カ月ぶりに1万5000円を割り込んだ。年明けから4000円余りの値下がり。この日までの下落幅(21.4%)は2008年のリーマン・ショック時(41.3%)には及ばなかったものの、00年のITバブル崩壊時(22.0%)にほぼ並んだ。
「日銀が緩和策を打ち出すたびに株価は右肩上がりに戻っていたのに、今回、日銀効果は2日しかもたなかった。これで投資家たちの心は折れたんです。これまで政府が何もしてこなかった一方で、日銀は仕事をしてきた。でも、日銀頼みはもう限界です」
直近では株価に下げ止まりの兆しも見え、2月19日の終値は1万5967円。市場はひとまずパニック状態から脱したようにも思えるが、荒い値動きが続く。ぱりてきさすさん自身は先行きは厳しいという見方だ。
「政府がこのまま無策なら、将棋に例えれば日本経済はもうすぐ詰むかもしれない状態です」