アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はウェザーマップの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■ウェザーマップ 放送事業部 課長 増田雅昭(37)
2013年1月14日、関東地方を大雪が襲った。増田雅昭(一番左)は、前日の天気予報で「雪の備えも必要」と注意を促したが、朝に降り出したときは雨。油断した人が多かったのだろう。都心で昼前に雪に変わると交通機関は混乱し、転倒事故も相次いだ。
「あの夜、町に鳴り響いていた救急車のサイレンの音は忘れられません」
増田が天気に興味を持ったのは中学時代。横浜国立大学経営学部に在学中、気象予報士の資格を取った。今では、お昼の情報番組「ひるおび!」(TBS系)などテレビやラジオ番組で天気予報を担当する傍ら、フリーあるいは社員として所属する60人超の予報士の指導にもあたっている。
ウェザーマップでは毎日、気象庁のデータをもとにコンピューターで独自に予報を割り出している。そこに予報士が、自分の見解を加え、各メディアの天気コーナーで解説する。
「後輩たちへは、導入(予報に入る前の小話)のネタ集めや言葉の選び方などについてはアドバイスしますが、予報そのものには口を出さないようにしています。予報に?絶対?はありませんから」
インターネットで手軽に、気象解説を見ることができる昨今。その情報に引きずられ、同じような見方が広がりがちになってはいけないと、独自の考えを持つよう若手に促している。多種多様な予報士が増えていくことが願いだ。
「予報の究極の目的は、防災。災害のシグナルを広く受け取っていただくためには、平時から多くの方に天気予報に興味を持っていただきたい。そのためには、いろんなタイプの予報士がいて、間口を広げたほうがいい」
自身には「愚直」と言い聞かせる。
「この人の予報を聞いていてよかった、という信頼を地道に得ていかなければならない。そのためには愚直にいくしかない」
今回の撮影中も、集まった若手たちと、寸暇を惜しむかのごとく、天気の話に花を咲かせていた。
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・安楽由紀子)
※AERA 2015年10月5日号