アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はMSDの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■MSD メディカル・サイエンス・リエゾン マネージャー 中村美穂(49)
朝起きると、「眠り」のことを考える一日が始まる。製薬会社MSDのメディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)マネージャー、中村美穂の目下の課題は、昨年発売された不眠症治療薬を適正に使ってもらうことだ。
MSLは、まだ日本ではなじみが薄いが、欧米ではすでに根付いている職種。高度な専門知識を持ち、医学的、科学的な見地から、専門医や研究者に担当する医薬品や関連する疾患・治療の情報を提供。ディスカッションしながら、専門的な見解を得ることが役割だ。日本でもいま、注目され始めている。
情報提供する点では、営業社員のMR(医薬情報担当者)と似ている。しかし、MRが販売の数値目標を持つのに対し、MSLは営業やマーケティングの部門から独立している点で大きく異なる。専門家と議論するときは、自社製品、他社製品の区別はしない。
昨年、大手製薬会社が薬の重い副作用を国に報告していなかったことが、大きな社会問題になった。
「やはり製薬会社は患者さん目線でなければいけません。薬の効果だけでなく安全性も含め、科学的に裏付けされた情報が最終的に患者さんの治療に役立つよう活動することが、私たちの役目です」
東京理科大学薬学部を卒業後、1989年に萬有製薬(現MSD)に入社した。学術部門や営業などを経て、2012年から現職。担当は不眠症と骨粗鬆症。専門家との高度な議論に耐えうるよう、勉強を欠かさず、日々更新される最新のデータを精査する。カバンには、いつも資料や論文を詰め込んでいる。
チームは7人。モチベーションを下げるような邪魔はしたくないから、細かいことは注意しない。メンバーが仕事に集中できる環境をつくることが大事だと考えている。
「チームのメンバーが専門の先生方に評価され、信頼関係を構築できたときが、何よりうれしいですね」
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・大川恵実)
※AERA 2015年9月14日号