ただ、このパフォーマンスが支持されているかというと、そうではない。仏の地域圏議会選挙ではオランド大統領が率いる中道左派・社会党は、中道右派・共和党にも劣る3番手となった。
欧米の人々が中東からの難民やイスラム教徒への排斥に向かうのは、もっと身近な「テロは国内のイスラム社会からくる」という不安の裏返しだからだ。
仏は欧州で最多の470万人(人口の7.5%)のイスラム教徒人口を抱える。米国にも約300万人のイスラム教徒がいて、毎年10万人が難民・移民として入国している。米欧でイスラム教徒の排斥が広がれば、社会は分裂し、さらに社会不安が広がるという悪循環に陥りかねない。
国連難民高等弁務官事務所によると、今年海を渡って欧州にたどり着いた難民は9日までに92万人。そのうち女性と子どもが4割を占め、家族連れが多いことを示唆する。父親だけが先に欧州に渡り、後から妻子を呼び寄せる例も多い。私がカイロで知り合ったシリア難民(36)は、今年8月下旬にトルコから単身、エーゲ海をボートで渡ってドイツにたどり着いた。3歳の長男と1歳の長女がいる。
「難民生活では子どもたちの将来が開けない。子どものために海を渡る決心をした。海ではボートが転覆し、3時間泳いだ」
内戦で生活の基盤を奪われた人々が命がけで欧州を目指す。7日にジュネーブで開かれた記者会見で、グテーレス国連難民高等弁務官は語った。
「シリア難民がイスラム教徒だから受け入れられない、という者たちは、テロ組織を支援し、彼らがもっと多くの人々を取り込むのを助けることになる」
※AERA 2015年12月21日号より抜粋
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