「われわれの意見を出し、これがいいと言えば、どこかとくっついているのではないかと勘ぐる人もいる。頭に血が上っている状態で、それは避けたかった」
Aさん自身は問題のない棟に住む。しかし、傾いた棟だけの一部建て替えには消極的だ。
「そこだけ建て替えたら、他の棟は資産価値が落ちる。私も、このまま住み続けたいですよ。ただし、十数年経てば老人ホームに行こうかな、という時期になる。売って出なきゃいけない。二束三文じゃねぇ……」
40代の理事Bさんは、売り主への不信感を募らせる。
「大まかな補償案を示して、あとは管理組合で決めろ、と丸投げ。でも、どっちの責任なのか。合意形成も、売り主が住民に頭を下げて同意をとれば、管理組合は臨時総会だけ開けばいい。それもせず、何でもかんでも丸投げしているようで……」
週1回ペースで開く理事会は、長時間に及ぶ。管理組合の役員は20人。仕事を終えて集まり、夜中の1時、2時まで話し合う。労力は計り知れない。三井ブランドと格闘しているようだ。
※AERA 2015年11月30日号より抜粋