民間での経験を生かし、公務員の世界で活躍する人が増えている。それぞれの現場で「お役所仕事」に新しい風を吹き込んでいる。
公認会計士や社会保険労務士といった「士業」の専門家のなかでも、地方自治の現場で活躍が目立つのが弁護士だ。地方分権の進展に伴い、民間事業者との協働プロジェクトなど独自の法律判断に基づく事業が増加。住民側の権利意識の高まりもあり、紛争が訴訟に発展するケースが多いことも背景にある。
船崎まみさん(35)は昨年4月、弁護士として東京・多摩市役所に3年間の任期付き職員として採用された。各課からの法律相談、市が抱える訴訟に関する書面作りや裁判所への出頭などで忙しい日々を送る。
弁護士登録してから多摩市役所に来るまで6年半にわたり、法テラスなどで住民の身近な法律相談に応じてきた。
「誰もが法的支援を受けられるように力を尽くす」
その思いは、市役所に来ても変わらない。
「親族による、高齢者の虐待と確認されたケースがある」
昨秋、高齢支援課の職員から、こんな相談が舞い込んできた。独り暮らしの高齢者には、認知症の兆候があった。近くに親族がいたが、十分なケアがなされていなかった。垂れ流しの排泄物がそのままの部屋に、下着姿で独り取り残されていた。暖房はなく、冬を迎えれば手遅れになることは明らかだった。