時任さんは、不当な「雇い止め」だとして、裁判を起こした。だが今年5月、第一審では敗訴。公務員の「任用」は、民間企業が労働者と結ぶ「契約」よりも、労働者の権利が守られにくい。そのため、再任用拒否には正当性があるという理由だった。
「民間であれ、公務員であれ、働いてお金をもらって生活をするという点は変わらないはず。なのに非正規の公務員は、法で守ってもらえない場所にいるんです」(時任さん)
公務員が「安定した仕事」の代名詞だった時代は、もう終わったのかもしれない。
総務省の調査では、2008年から4年間で、地方自治体における非常勤、臨時職員は10万人増えて60万人になった。全日本自治団体労働組合(自治労)の調査では、70万人と推計されている。公務員の3人に1人が、「非正規公務員」。いわゆる「官製ワーキングプア」だ。
地方自治総合研究所の研究員、上林陽治さんは、『非正規公務員』(12年)という著書で、非正規で働く公務員たちの過酷な状況を指摘している。
「現在、状況はさらに悪くなり、公務員の世界はブラック化している。非正規職員の数は増え、基幹的な業務も非正規が担わされる。ハローワークの相談員が雇い止めにあい、次の日に自分の仕事を求めてハローワークにやってくる。こんなブラックユーモアみたいな話が、実際に起こっているんです」(上林さん)
※AERA 2015年11月16日号より抜粋